2018年3月5日月曜日

釣手土器の猪造形

猪の文化史考古編 6

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (2)土器に描かれた物語 ②釣手土器」の学習をします。
前回記事までと同様に学習といっても土器写真の文様を理解するという視覚的確認作業(=写真の観賞)です。

1 釣手土器の説明
釣手土器とは中期中頃から中期後半にかけて、長野山梨など中部地方や関東の山岳地域を中心につくられた土器で、内面や釣手の縁に煤がついていたり焦げ跡が残されているものが多く、この土器の中で火が燃やされたことは確かである。「古事記」や「日本書紀」にある火の神「カグツチ」とそれを生んだ「イザナミ」に由来する造形と説く研究もある。この釣手土器にも猪造形が見られる。

2 釣手土器の猪造形

図1 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手頭頂部に1頭、両脇にそれぞれ1頭ずつ猪が付く。きわめてリアルに猪を表現している。

図2 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
正面に大きな丸い孔1つからなる造形が釣手頭頂部に1つと、その両脇に2個ずつ合計5個並ぶ。「平らな吻端」「半円筒形」という猪の特徴そのものである。親猪1頭とウリボウ4頭ということになろうか。
親猪の背面から頭にかけて蛇が這う。

図3 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
頭頂部に3匹、鉢部の両側に2匹の合計5匹の動物が付く。
正面から見た時に限り猪で、背面から見ると目を始めとした頭部や身体は蛇とみてよい。

図4 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手部に3匹、背面の環を覗くかのように1匹、合計4匹、ツチノコのような動物が這う。蛇とみてよいのではないか。


図5 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
鼻先が丸くしかも丸孔が開けられるものもある。目の表現では蛇とも共通する。この例は蛇と猪の組み合わせから構成される最初の造形かもしれない。
図4→図5→図3の順で「蛇」から「猪と蛇との融合」に進んでいくようである。

(図5は細部がつぶれていてよく理解できませんでした。)

図6 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手中央に大きな猪がいてその両側の子猪が並ぶ構成であり、猪であることはずんぐりした体つきからわかるが、正面が人の顔となっている。

図7 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「蝙蝠」とも言われる動物が付く。釣手頂部の顔、その顔から両側につらなる把手の表現は蝙蝠にふさわしい。しかしその鼻はやはり猪を思い起こすのに十分である。猪が意識されているのではなかろうか。

写真1 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。

写真2 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。


写真3 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。

3 感想
最初は図と写真の中の猪がどれなのかサッパリ判らなかったのですが、少しずつ理解できるようになってきました。
これらの土器を利用した祭祀の背景にある縄文神話がどのようなものであったのか、興味を持ちます。

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