2018年3月7日水曜日

さらに猪をもとめて

猪の文化史考古編 7

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (2)土器に描かれた物語 ③さらに猪をもとめて」の学習をします。
前回記事までと同様に学習といっても土器写真の文様を理解するという視覚的確認作業(=スケッチ・写真の観賞)です。

判りづらい土器が多いので、画像を特大にしました。

1 北陸等の猪装飾
これまで中部山岳地帯の猪装飾をみてきたが、北陸等の猪装飾を見る。

写真21 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
この土器につけられたハート形の装飾は、一見、ヒトの顔の輪郭にも似ている。
だが装飾の中央部には、細い目と突き出した鼻先および二つの鼻孔という造形がある。これは北陸地方に前期末から伝わる猪によく似ている。

(どれが細い目なのか、私は特定できませんでした。)

写真22 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
鼻先を上に向けた猪のような頭部が四個、土器の胴体を等間隔にめぐっている。


図8 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
細い目をしたハート形の顔が付く、「動物意匠文土器」と呼ばれるこの動物も、猪の可能性がある。この顔の下、土器の胴部にあたる箇所には小さな双環把手があり、下から渦巻いてくる文様と一体となっている。この装飾を蛇とすると、この土器には猪と蛇が同時に表現されていたことになる。猪や蛇が登場する縄文の物語が存在していたのである。


写真23 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
短めの顔ながら、図8によく似た猪と思われる顔がつく、しかしこの顔には、左方向に延びながらやがて時計回りに渦巻く胴体と尻尾を持つ蛇へとつながっている。つまりこの造形は蛇であり、従って猪のような顔は、実は蛇の胴体ということになる。

(逆ハート形の造形を「短めの顔ながら、図8によく似た猪と思われる顔」と記述しているのでしょうか?「左方向に延びながらやがて時計回りに渦巻く」のがどの部分を指すのか私は特定できませんでした。結局記述が全く理解できませんでした。)

写真24 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
大きな把手が四単位でつくが、その把手と把手の間の口縁直下に丸い孔を上にした半円筒形の造形がへばりついていることが確認できる。胴部にも同じような瘤が上を向いている。これまでみてきた猪に似た表現でもある。
「火炎型土器」と呼ばれる種類の土器である。
四つの大きな把手。その最上部にもえあがる火炎。実はそれも猪のたてがみとみなせないだろうか。

縄文中期の中頃、猪が大量発生し縄文集落にとって身近な動物となった時期ではなかったか。食料としても重要な役割を担った猪。それが豊穣を願う神として、蛇とともに中期縄文人の祈りの世界に君臨し、神話の主役の一つという立場から土器に刻み込まれたのである。

2 感想
●感想1
写真やスケッチそのものを掲載するとともに、もう一枚同じものを用意して、その画像に線や色を使って「これが細い目」とか、「猪の顔」と見立てる造形はこの部分とか説明があると専門家以外にも情報が伝わると考えました。またそのような説明図を作成すると、解釈が露わになりますから、専門家自身も自分の思考の的確性を評価できるに違いありません。
写真の掲載と文章記述だけでは、そこに語られる重要性(興味深さ)が専門家以外に広く流布することは期待できませんから、もったいないと思います。
土器そのものを3Dデータ化して、自由な角度や視野で造形を説明する技術はすでに実用化されています。3Dデータを駆使した画像で神話の世界を人々に平易に説明すれば、多くの人々が考古に興味を持つと思います。

●感想2
猪が神話の主役になり、狩のもう一つの主対象であるシカが主役にならない理由は何故か?興味が湧きます。恐らく幾つかの理由があると思います。
蛇(爬虫類)に対してなぜ縄文人が着目したのか?蛇は食ったとは思いますが狩の主対象ではないと思います。なにか特別の理由があると思います。

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