2018年4月11日水曜日

後期の土器に付く猪

猪の文化史考古編 12

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (4)後期の土器に付く猪」の学習をします。
学習といっても土器スケッチ・写真の図像を理解するという視覚的確認作業(=スケッチ・写真の観賞)です。

1 後期の土器に付く猪

青森県韮窪遺跡出土狩猟文土器 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
図書では様々な解釈をしていますが最後に次のように解釈しています。
先にも書いたように狩猟文土器のシーンは、実際の出来事を土器に表現したものと思われる。
その出来事とは動物を用いた儀式であり、その際に用いた動物が猪および熊であった可能性はあろう。近代アイヌに伝わる熊祭りの思想は「物送り」に基づく一つの儀式でもあるが、そこには動物への鎮魂と豊猟祈願があったと考えられる。この「物送り」の考えが歴史的にどこまで遡ることができるかは大きな課題であるが、少なくとも猟により捕獲され食料となった動物そのものに対する儀式ということになる。
一方、犠牲獣という考え方もできる。この場合祈りの対象は別にあり、その願いを成就するために動物をささげるということになる。
狩猟文土器に描かれた意味が、狩猟のシーンなのか、物送りの儀式なのか、さらには犠牲獣を必要とした祭りなのかは定かでない。
狩猟シーンや物送りであるならば、その時に対象となった動物であり、犠牲獣ならばやはり祭りの内容によって動物の種類が決まることになろう。狩猟文土器及び動物形内蔵土器の動物は、その時々によって変わってもよいのかもしれない。それが熊であっても猪であっても良いということになる。」「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用


動物形内蔵土器 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
土器内部の底に動物形が付いている土器とその部分だけの土器片のスケッチです。狩猟に関わる祭祀ツールであったと考えられます。

猪を模した注口土器 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
蓋部分が猪の上顎になり、牙が表現されています。オス猪です。

玉のついて注口土器 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
図書では2つの瘤が睾丸をイメージし、オス猪をイメージした注口土器で、酒を入れて注ぐ祭具であるとしています。

2 感想
青森県韮窪遺跡出土狩猟文土器は実際の狩猟シーン、物送り儀式のシーン、犠牲獣による祭のシーンの3通りの解釈があり得ると述べています。
この中で物送り儀式シーンの描写である可能性に興味が魅かれます。というのはこれまで学習してきている西根遺跡でイノシシを使ったイオマンテ類似活動を想定しているからです。西根遺跡からは多量のイノシシ・シカの焼骨と飾り弓が出土しています。イノシシ・シカの焼骨は幼獣のものが多く、かつ頭骨がほとんどありません。

参考 祈りの空間 戸神川谷津の隠された秘密にせまる -西根遺跡 縄文~近世の自分流学習-

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